箱庭療法について
箱庭療法とは、心理療法の一技法です。セラピストが見守る中で、クライエントが、砂の入った箱の中に、人、動物、植物、建物、乗り物などのミニチュアを置き、自由に何かを表現したり、物語を創って遊んだりすることを通して行います。
歴史的には、1929年にロンドンの小児科医M.ローエンフェルトによって作られ、その後スイスのユング派アナリストであるD.カルフによりユング心理学の考えを取り入れ発展しました。日本では1965年に河合隼雄によって導入され、現在は病院や学校や相談機関など様々な分野で使われています。
小児科医にによって作られた、という事からも分かるように、始まりは子ども向けのセラピーとして開発された心理療法です。
実際、発達障がいの子どもや夜尿症、不登校、チック、場面緘黙などの子どもに効果があることが分かっています。
特に分離不安がある子どもには、親子で箱庭を製作することで不安が減り、「離れていても繋がっている」感覚を得られることで、子どもが安心して離れられるようになります。
このように書くと子どもの為だけの療法のように感じられるかもしれませんが、大人にも効果があることが分かっています。
特に日本文化は自己表現することよりも、「周りに合わせる」ことを良しとされる風潮があり、自分を表現することに苦手意識を持たれている方も多いかもしれません。
そのような方には、箱庭を作ることで自分を知り、癒すことで現実を変えていくことができます。
私と箱庭との出会い
私が最初に箱庭を知ったのは、大学進学の時、心理系の大学の資料を集めていた時でした。
大学のパンフレットに書かれている箱庭にとても興味を持ち、「勉強してみたい!」そう思っていました。
結局私はその大学に進学することはなく、しばらく箱庭の存在を忘れていたのですが、社会人になって心理学を学び始めた時に、箱庭との再会を果たすのでした。
箱庭を是非自分の心理療法に入れたい!そう思い、私は学べる所を探しました。
偶然にも、愛媛県で箱庭を教えて下さる先生を見つけ、私は毎週愛媛に通い、箱庭の勉強をしました。
箱庭を学びながら、自分自身も箱庭療法を受けました。
砂のサラサラとした感覚。触っているだけで癒されます。
私はカウンセラーに優しく見守られながら、自分の心の世界を箱庭に表現していきました。
箱庭ができると、どんな世界か、カウンセラーに質問を受けながら語っていきます。
この時、私はとても孤独を感じていました。
周りのみんなが見守ってくれていましたが、怖くて動けなくなっていたのです。
夫の結婚を両親に反対され、悩んでいた時でした。
「こっちに来れば素晴らしい世界があるよ~!橋を渡っておいでよ!」
動物たちはそう呼んでくれているのに、動けないのです。
箱庭を実際に作ってみると分かる事ですが、「ここにこれを置くとしっくりくる」
「この場所はなんだか違う」という感覚を持つことがよくあります。
「今日はこんなのを作ろう」と思っていても、実際にできたものは全然違う、という事もよくありました。
まさに箱庭は自分の心の世界なのです。
言葉にならない思いを箱庭で表現し、それを安心できる場でカウンセラーに語り、ただ受け止めてもらう。
それだけで気持ちが軽くなり、「私は私でいいんだ」そう言われているような気持ちになりました。
自分の中の孤独や怖れ、不安を箱庭療法で統合していった結果、
私は新しい世界に行くことができました。
動物たちと一緒に、焚火を囲んでいるイメージです。(焚火がなかったのでビー玉を置きました)
このような箱庭を作れるようになってから、私は両親からの精神的自立へと向かって行ったのです。
まさに「箱庭は私の心の世界。そしてそれが私の住む現実」
そのことを実感したのでした。
箱庭療法をする上で大切にしていること
私がカウンセリングや箱庭療法をする上でとても大切にしていること、それは「ジャッジしない」という事です。
どんな箱庭が素晴らしいか?どんな箱庭を作るとダメなのか?そんな事は一切気にせず、思うままに制作して頂きたいと思います。
私が知りたいのは、あなたがどんな世界で今生きていて、どんな世界を見たいと思っているのか。
そのための橋渡しを、どうすれば良いのか、という事です。
私自身も、様々な事に苦しんできた結果、今があります。
「わかっているけど・・・でも・・・」のお気持ちに、寄り添っていきたいと思っております。